多忙な社会人大学院生のためのルーティン自動化ハック:テクノロジーで家事・勉強時間を最大化する方法
はじめに
社会人大学院生は、仕事、学業、そして家事や育児といったプライベートの責任を同時にこなす必要があり、慢性的な時間不足に直面している方が多いことと思います。特に、論文執筆のための研究時間、専門分野の学習時間、そして家族との時間や休息時間を確保することは容易ではありません。これらの限られた時間を最大限に活用するためには、日々のタスクを効率化することが不可欠です。
効率化の方法は多岐にわたりますが、本記事では、特にテクノロジーを活用した「ルーティンワークの自動化」に焦点を当てます。日々の生活や学習の中で無意識に行っている定型的で繰り返しの多い作業を自動化することで、手作業にかかる時間を大幅に削減し、より重要で創造的な活動に集中するための時間を捻出することが可能になります。PCスキルが高く、新しいツールやテクノロジーの導入に抵抗がない読者層に向けて、具体的なツールとその活用方法、実践的なハックを紹介いたします。
ルーティン自動化の基本概念とメリット
ルーティン自動化とは、特定のトリガー(きっかけ)が発生した際に、あらかじめ設定しておいた一連の処理をシステムが自動的に実行することを指します。例えば、「特定のメールを受信したら、その添付ファイルをクラウドストレージに自動で保存する」「特定のキーワードを含むニュース記事を自動で収集し、指定した場所にまとめる」といったことが自動化の例です。
自動化に適しているタスクの主な特徴は以下の通りです。
- 定型的である: 常に同じ手順で実行される作業。
- 繰り返し発生する: 毎日、毎週、毎月など、定期的に行う作業。
- デジタルで完結する: コンピュータやスマートフォン上での操作で完結できる作業。
ルーティン自動化を導入することには、以下のようなメリットがあります。
- 時間の大幅な節約: 手作業で行っていた時間を他のタスクに充てることができます。
- ミスの削減: 人為的な入力ミスや手順の誤りをなくすことができます。
- 精神的な負担の軽減: 面倒な繰り返し作業から解放され、集中力を維持しやすくなります。
- タスクの抜け漏れ防止: 設定したトリガーに基づいて自動的に実行されるため、タスクを忘れることがありません。
多忙な社会人大学院生におすすめの自動化ツールと活用方法
ここでは、多忙な社会人大学院生が家事や勉強の効率化に活用できる主要な自動化ツールをいくつか紹介し、具体的な活用例を解説します。
IFTTT (If This Then That)
IFTTTは、「もしXが起こったら、Yを実行する」というシンプルなレシピ(アプレット)を作成することで、異なるウェブサービスやIoTデバイス間を連携させ、自動化を実現するツールです。プログラミングの知識がなくても直感的に設定できるのが特徴です。
- 勉強関連の活用例:
- 「Googleカレンダーに『〇〇論文執筆』という予定を追加したら、Todoistに『〇〇論文の構成案を作成』というタスクを自動で追加する」
- 「特定のRSSフィード(例: 学会の最新情報)に新しい記事が投稿されたら、Pocketに保存する」
- 「Gmailで特定の差出人からメールを受信したら、Slackの特定のチャンネルに通知する(研究室の連絡など)」
- 家事関連の活用例:
- 「Googleアシスタントに『買い物リストに追加』と話しかけたら、指定のスプレッドシートに自動で項目を追加する」
- 「特定のオンラインショップからの購入完了メールを受信したら、家計簿アプリに自動で取引を記録する(対応していれば)」
Zapier
ZapierもIFTTTと同様にウェブサービス間の連携を自動化するツールですが、より多くのサービスに対応しており、複数のステップを含む複雑な自動化フロー(Zapと呼びます)を構築できるのが特徴です。無料プランから利用可能ですが、より多くのタスクや複雑なZapには有料プランが必要になります。
- 勉強関連の活用例:
- 「Google Formsでアンケート回答があったら、その内容を自動でGoogle Sheetsに追加し、さらに回答者に確認メールを自動送信する」
- 「Gmailで特定の件名を含むメールを受信したら、その添付ファイルをDropboxに保存し、Trelloに新しいカードを作成して通知する」
- 「Evernoteに特定のタグを付けてノートを作成したら、その内容をWordPressの下書きとして自動投稿する」
- 家事関連の活用例:
- 「特定の口座から引き落としがあった際に、自動でスプレッドシートに記録し、週次で集計結果を自分にメールする」
- 「オンラインで注文した商品の追跡番号が記載されたメールを受信したら、その情報を指定したアプリ(例: ShipStationなど追跡サービス)に自動登録する」
ショートカット (iOS/macOS)
Apple製品のユーザーであれば、「ショートカット」アプリを活用することで、デバイス内や対応アプリ間の操作を自動化できます。定型的な操作や情報への素早いアクセスに役立ちます。
- 勉強関連の活用例:
- 「『論文執筆モード』というショートカットを実行すると、特定の文献管理アプリとテキストエディタを同時に開き、通知を一時的にオフにする」
- 「現在の研究テーマに関する最新のWeb検索結果をワンタップで表示する」
- 「参考文献リストのフォーマットを自動で整える(特定のパターン認識による簡易的なもの)」
- 家事関連の活用例:
- 「『帰宅時に実行』というショートカットで、スマートホームデバイスを操作し、家族にメッセージを送る」
- 「スーパーのポイントカードアプリを起動し、支払いアプリを開く一連の操作を自動化する」
Power Automate (Windows/Microsoft 365)
WindowsユーザーやMicrosoft 365をよく利用する方には、Power Automateが強力な選択肢となります。デスクトップ上の操作(RPA: Robotic Process Automation)や、Microsoft製品(Outlook, Excel, SharePointなど)を中心とした多様なサービス連携による自動化が可能です。
- 勉強関連の活用例:
- 「特定のフォルダにダウンロードされた論文PDFのファイル名をルールに従って自動で変更し、指定の場所に移動する」
- 「Excelファイルから特定のデータを抽出し、Wordの定型レポートに自動で貼り付ける」
- 「受信したメールの件名に基づいて、Outlookのフォルダに自動で振り分ける」
- 家事関連の活用例:
- 「請求書PDFを指定のフォルダから読み込み、必要な情報を抽出してExcelシートに自動で入力する」
- 「定期的に必要な日用品のリストをExcelで管理し、在庫が少なくなった項目をTeamsに通知する」
実践:家事・勉強ルーティン自動化の具体的なハック
上記ツールを組み合わせたり、単体で活用したりすることで、多忙な社会人大学院生は以下のような具体的なハックを実践できます。
- 情報収集の自動化:
- ハック: GoogleアラートやRSSフィードで設定したキーワード(研究テーマ、関連技術、競合情報など)に関する最新情報を自動的に収集し、IFTTTやZapierを使って指定のメモアプリ(Evernote, OneNoteなど)やリーダーアプリ(Pocket, Feedlyなど)に自動で保存する。
- 効果: 最新情報を効率的にキャッチアップでき、情報収集にかかる手間と時間を削減できます。
- 論文・資料整理の自動化:
- ハック: 特定のメールアドレスに送られたPDFファイル(論文など)を、ZapierやPower Automateを使って自動的にクラウドストレージ(Dropbox, OneDrive, Google Driveなど)の指定フォルダに保存する。ファイル名に規則性があれば、自動でリネームすることも検討します。
- 効果: ファイル整理の手間が省け、必要な資料に素早くアクセスできるようになります。
- タスク・スケジュール連携の自動化:
- ハック: 会議後にToDoとして発生した内容をメールで受け取った際に、Zapierを使ってそのメール内容からTodoistやAsanaといったタスク管理ツールに自動でタスクを作成する。または、特定の期間ごと(例: 週に一度)に「研究進捗のレビュー」「参考文献リストの確認」といった定期的なタスクを自動生成する。
- 効果: タスクの登録漏れを防ぎ、スケジュール管理の手間を削減できます。
- 定型連絡・通知の自動化:
- ハック: 研究室メンバーへの週次報告のリマインダーを、特定の曜日の特定の時間にSlackやTeamsに自動投稿する。あるいは、ショートカットアプリを使って、家族への「これから帰ります」といった定型メッセージをワンタップで送信できるように設定する。
- 効果: コミュニケーションにかかる定型的な手間を省き、忘れがちな連絡を防ぎます。
- 簡単なデータ処理の自動化:
- ハック: Web上の公開データや実験で得られたデータの一部(例えばCSVファイル)を、Power AutomateやPythonスクリプトを使って自動的に読み込み、簡単な集計やグラフ作成を自動で行う。
- 効果: 定型的なデータ処理時間を短縮し、分析自体に集中できます。
- 家事関連リマインダーの自動化:
- ハック: IFTTTを使って、特定の曜日の特定の時間に「洗濯機を回す」「食材の買い出しリストを確認する」といった家事関連のリマインダーをスマートスピーカーからアナウンスさせたり、スマートフォンに通知させたりする。
- 効果: 家事のルーティン化を助け、忘れ物を減らします。
自動化導入のステップ
自動化は一度に全てを行う必要はありません。まずは小さなタスクから始めて、徐々に適用範囲を広げていくのが現実的です。
- 現在のルーティンを洗い出す: 日々の仕事、勉強、家事で行っているタスクをリストアップします。特に「面倒だな」「時間がかかるな」「何度も同じことをしているな」と感じるタスクに注目します。
- 自動化の可能性を評価する: リストアップしたタスクの中から、定型的で繰り返し発生し、デジタルで完結しやすいものを選び出します。
- 目的に合ったツールを選定する: 自動化したいタスクと、現在利用しているサービスやデバイスを考慮し、最も適したツール(IFTTT, Zapier, ショートカット, Power Automateなど)を選びます。複数のツールを使い分けることも一般的です。
- 小さく始めて効果を検証する: 難易度の低い、一つか二つのルーティンから自動化を試みます。設定方法を確認し、期待通りの動作をするか検証します。
- 徐々に自動化を拡大する: 小さな成功体験を積み重ねながら、より複雑なタスクや、他の分野のルーティンにも自動化を広げていきます。定期的に自動化の効果を見直し、改善を行います。
まとめ
多忙な社会人大学院生にとって、時間は最も貴重なリソースです。日々のルーティンワークに潜む無駄な時間を削減することは、学業や仕事の成果を高め、プライベートの充実にも繋がります。本記事で紹介したIFTTT、Zapier、ショートカット、Power Automateといったテクノロジーを活用することで、情報収集、タスク管理、ファイル整理、コミュニケーションなど、様々なルーティンを自動化することが可能です。
これらのツールは高度なプログラミングスキルがなくても利用できるものが多く、導入のハードルはそれほど高くありません。まずは、ご自身の日常の中で最も負担に感じている定型的な作業を一つ選び、自動化に挑戦してみてはいかがでしょうか。小さな一歩が、やがて大きな時間の創出と、より効率的な生活・学習スタイルの実現に繋がるはずです。