デジタルツールで実現する『習慣化』効率化:多忙な社会人・大学院生のための具体的仕組み作り
はじめに
多忙な社会人大学院生の皆様にとって、日々の仕事、研究、そして家事を両立させる中で、新しい習慣を身につけたり、既存の習慣を維持したりすることは容易なことではありません。学習時間を確保する、健康のために運動する、特定のタスクを毎日こなすなど、多くの「やるべきこと」が習慣として定着しないまま、時間だけが過ぎていくという状況に陥ることも少なくないでしょう。
習慣化は、目標達成や自己成長において非常に重要な要素です。しかし、多忙な日々の中で意志力だけに頼って習慣を維持しようとすると、すぐに挫折してしまう可能性が高まります。ここで強力な味方となるのが、デジタルツールを活用した「仕組み作り」です。テクノロジーを効果的に利用することで、意志力に依存せず、習慣を無理なく日々の生活に組み込み、定着させることが可能になります。
本記事では、多忙な社会人大学院生がデジタルツールを活用して習慣化を効率的に行うための具体的なハックと、その仕組み作りについてご紹介します。
習慣化を効率化するデジタルツールの種類と活用方法
習慣化をサポートするために活用できるデジタルツールは多岐にわたります。それぞれのツールが持つ特性を理解し、目的に合わせて組み合わせることが重要です。
1. 習慣トラッカーアプリ
習慣トラッカーアプリは、設定した習慣の達成状況を記録し、視覚的に確認するためのツールです。連日達成することで「連続記録(ストリーク)」が伸びていくのを可視化できるため、モチベーション維持に役立ちます。
- 主な機能: 習慣の設定、日々の達成記録、カレンダー表示、統計データ、リマインダー設定、バッジ/レベルアップ機能(一部アプリ)
- 活用方法:
- 身につけたい習慣(例: 毎日30分読書、週3回運動)を具体的に設定します。
- 毎日、習慣を実行したらアプリで記録をつけます。
- 連続記録を意識することで、サボり防止に繋がります。
- 週ごとや月ごとの統計データを振り返り、習慣化の進捗を確認します。
- 代表的なアプリ: Streaks (iOS), Habitica (ゲーミフィケーション要素), Forest (集中支援と連携), Notion (データベース機能で自作)など。
2. ToDoリスト / タスク管理ツール
習慣を単なる「やりたいこと」ではなく、具体的な「タスク」として扱うことで、日常のタスク管理フローに組み込むことができます。特定の時間や場所に紐づけてタスクを設定できるため、実行忘れを防ぎます。
- 主な機能: タスクの追加、期限設定、リマインダー、繰り返し設定、プロジェクト/リスト分け、優先度設定
- 活用方法:
- 習慣を日々のタスクとして登録します(例: 「朝のストレッチ 7:00」)。
- 繰り返しの習慣は、毎日や特定の曜日に繰り返す設定を行います。
- リマインダー機能を活用し、指定した時間に通知を受け取るようにします。
- 習慣タスクを他の仕事や学業のタスクと同じリストで管理することで、日々のルーティンに組み込みやすくなります。
- 代表的なツール: Todoist, Microsoft To Do, Google Tasks, Asana, Trelloなど。
3. リマインダー / 通知機能
習慣を実行すべきタイミングで通知を受け取ることは、習慣化の第一歩である「実行」を促す上で非常に効果的です。スマートフォンの標準リマインダー機能や、カレンダーアプリの通知機能を活用します。
- 主な機能: 時間指定リマインダー、場所指定リマインダー、繰り返し設定
- 活用方法:
- 「帰宅したら研究室の掃除をする」「寝る前に翌日のタスクを確認する」など、特定の行動や時間、場所をトリガーとしたリマインダーを設定します。
- 習慣トラッカーやタスク管理ツールと連携し、通知を見たらすぐに該当アプリを開けるように設定するとスムーズです。
- 代表的なツール: iOSリマインダー、Googleカレンダー通知、Outlookカレンダー通知、各種タスク管理アプリのリマインダー機能。
4. 自動化ツール (IFTTT, Zapier, ショートカットなど)
習慣のトリガーや記録プロセスの一部を自動化することで、手動での操作を減らし、習慣実行へのハードルを下げることができます。
- 主な機能: 異なるアプリやサービス間の連携、特定の条件に基づいたアクションの実行
- 活用方法:
- 「GPSで自宅に到着したら、読書習慣のリマインダーを送信する」(IFTTT/Zapier/ショートカット)
- 「習慣トラッカーで習慣を完了したら、その情報をスプレッドシートに自動記録する」(Zapier)
- 「特定の時間に、習慣実行に必要なアプリ(例: 語学学習アプリ)を自動で開く」(ショートカット)
- 代表的なツール: IFTTT (If This Then That), Zapier, Microsoft Power Automate, Apple ショートカットなど。
5. カレンダーアプリ (タイムブロッキング)
習慣を日々のスケジュールの中に具体的な「時間ブロック」として組み込むことで、習慣を実行する時間をあらかじめ確保できます。「〇時〜〇時は読書」「△時〜△時は論文執筆」のように、他の予定と同じようにカレンダーに書き込みます。
- 主な機能: 予定の登録、繰り返し設定、色分け、通知設定
- 活用方法:
- 習慣に充てる時間を具体的に決め、カレンダーに予定として登録します。
- 他の予定との兼ね合いを見ながら、実行可能な時間帯を設定します。
- 習慣の時間を「予約」することで、その時間を他の作業に侵食されにくくします。
- 代表的なツール: Google Calendar, Outlook Calendar, Apple Calendarなど。
6. デジタルジャーナル / メモアプリ
習慣の実行に伴う気づきや反省、成功要因などを記録することで、習慣化のプロセスを振り返り、改善に繋げることができます。うまくいかなかった日の原因や、続けることができた日の状況などを記録すると、自己理解が深まります。
- 主な機能: テキスト入力、画像/ファイル添付、検索機能、タグ付け
- 活用方法:
- 習慣を実行した後、簡単な感想や困難だった点を記録します。
- 習慣を始めたきっかけや、続けることで得られた良い変化などを記録し、モチベーション維持に役立てます。
- 特定のテンプレートを作成しておくと、記録の手間が省けます。
- 代表的なツール: Evernote, OneNote, Obsidian, Notion, Day Oneなど。
具体的な「習慣化」デジタルハックの例
これらのツールを組み合わせることで、より強力な習慣化の仕組みを構築できます。いくつかの具体的なハック例をご紹介します。
ハック1: 朝の学習習慣を自動化で定着させる
- 仕組み:
- スマートフォンのアラームを指定した時間に設定します。
- スマートフォンの自動化機能(例: Apple ショートカット)を使って、アラーム停止時に特定の学習アプリ(例: Anki)やデジタルノートアプリを自動で開く設定をします。
- タスク管理ツールに「朝学習〇分」という繰り返しタスクを設定し、完了したらチェックを入れます。
- 習慣トラッカーアプリでも朝学習の完了を記録します。
- 効果: アラームを止めたらすぐに学習環境が立ち上がるため、迷うことなく学習を開始できます。タスク管理と習慣トラッカーで進捗を二重管理することで、モチベーションを維持しやすくなります。
ハック2: 定期的な研究進捗レビューをカレンダーとリマインダーで仕組み化
- 仕組み:
- 週に一度、または隔週で、カレンダーに「研究進捗レビュー(60分)」のような予定を定期的に登録します。
- カレンダーアプリのリマインダーを設定し、開始時間の15分前と開始時間に通知が来るようにします。
- レビューに必要なファイル(論文ドラフト、実験データ、ToDoリストなど)をクラウドストレージにまとめ、カレンダーの予定にリンクとして貼り付けておきます。
- レビュー後、デジタルジャーナルやタスク管理ツールで、レビュー内容(例: 今週の成果、来週の目標、課題)を記録します。
- 効果: 定期的なレビュー時間を強制的に確保し、研究の停滞を防ぎます。レビューに必要な情報にすぐにアクセスできるため、スムーズに作業を開始できます。
ハック3: 寝る前の片付けルーティンをタスク化と自動通知で徹底する
- 仕組み:
- タスク管理ツールに「寝る前の片付け(10分)」という繰り返しタスクを設定し、期限を就寝1時間前に設定します。
- タスク管理ツールから、期限が近づいたら通知が来るように設定します。
- 自動化ツール(例: IFTTT)を使って、「片付け」タスクを完了としてチェックしたら、スマートフォンに「お疲れ様でした。良い睡眠を!」のようなメッセージが表示されるアプレットを設定します。
- 効果: 片付けをタスクとして明確に認識し、リマインダーで実行を促します。完了時の小さな報酬(メッセージ)が、習慣の定着を助けます。
習慣化を持続させるための追加テクニック
デジタルツールは強力なサポートになりますが、ツールだけに頼るのではなく、習慣化そのものの原則も理解し組み合わせることが重要です。
- スモールステップで始める: 最初から大きな目標を設定せず、無理なく達成できる小さな習慣から始めます(例: 毎日1ページだけ読む、5分だけ片付ける)。デジタルツールで記録をつけることで、小さな達成も可視化できます。
- トリガーと報酬を設定する: 「もし〇〇したら(トリガー)、△△をする(習慣)、そして完了したら□□(報酬)を得る」という形で習慣を設計します。デジタルツールを使って、トリガー(場所、時間、他の行動)に基づいたリマインダー設定や、完了後の自動通知を設定できます。
- 進捗を記録し、可視化する: 習慣トラッカーやスプレッドシートへの自動記録などで、日々の達成を記録し、グラフなどで視覚化します。これはモチベーション維持に非常に有効です。
- 環境を整える: 習慣を実行しやすいように、物理的およびデジタルな環境を整えます。例えば、学習習慣のために必要なアプリやファイルをデスクトップの目立つ場所に置く、通知をオフにする時間帯を設定するなどです。デジタルツールのランチャー機能や自動化機能も活用できます。
- 例外ルールを決めておく: 習慣を100%完璧にこなす必要はありません。体調が悪い日や予期せぬ用事が入った場合にどうするか、あらかじめ例外ルールを決めておくと、一度中断しても挫折しにくくなります(例: 体調不良の日は時間を半分にする、週末は休息日とする)。
- 「やらないことリスト」を管理し、誘惑を減らす: 習慣実行を妨げるような行動(例: SNSの長時間閲覧、無目的なネットサーフィン)を特定し、デジタルツール(例: スクリーンタイム制限、特定のアプリの使用制限設定)を使って誘惑を物理的に遮断することも有効です。
まとめ
多忙な社会人大学院生にとって、新しい習慣を身につけ、それを維持していくことは生産性向上と目標達成のために不可欠です。しかし、限られた時間の中で意志力だけに頼る方法には限界があります。
デジタルツールは、習慣化のプロセスを効率化し、仕組みとして生活に組み込むための強力なサポーターとなります。習慣トラッカー、タスク管理ツール、リマインダー、自動化ツール、カレンダー、デジタルジャーナルなどを適切に組み合わせ、具体的なハックとして実践することで、無理なく持続可能な習慣を構築することが可能です。
本記事でご紹介したハックを参考に、ぜひご自身の生活に取り入れたい習慣に対して、最適なデジタルツールを活用した仕組み作りを試してみてください。テクノロジーの力を借りることで、多忙な日々でも着実に自己成長を続け、目標達成に近づくことができるでしょう。